December 20, 2017

Made with Japan
Latvia+福井県〜鯖江
2017

FOLKHOODのメインプロジェクトであるMade with Japan。
私たちは、この取り組みを通じて、これまでの消費や寄付などの経済活動を通じてお金で解決するだけの問題解決ではなく、労働や環境、文化や技術、そして素材、時間に対する価値のフェアトレードができないかと考えています。
2017年は、バルト三国ににあるラトビアと福井県の鯖江の漆の仕事の融合を試みました。
Text and Photo by Aki Tomura

Made with Japan Project 2017 Latvia+鯖江

ラトビアへの旅

ラトビアの正式名称は、Latvijas Republika。首都は、リガ。北はエストニア、南はリトアニア、東はロシア、南東はベラルーシと国境に接する場所に位置し、面積は九州本島の1.76倍ほどの国です。

今年度、2017年のラトビアは、ヨーロッパグルメ特区としてラトビアが認定された年で外食がとても楽しい滞在になりました。コペンハーゲンで有名なnomaのように、地産地消でガストロミーのレストランも多く、東京に比べると価格帯も比較的気軽に食べ歩くことができます。建築ラッシュで次々と新たな建物や施設が増えている首都リガ。最新情報としてリガのトリップアドバイザーなどを眺めてから旅のスケジュールを組むことをお勧めいたします。どのレストランも味も見た目もサービスも満足できる時間を過ごすことができるはずです。

取り組み開始

まずは、2016年にラトビア、リトアニア、エストニアを旅をしながら木工製品を集めて回りました。それらを東京に持ち帰りそのままの状態で一年間日常使いで使用してみたところ、黒いシミやカビのようなものが入ることがわかりました。もちろん、植物性の油などを塗りながら、そのまま使用することもできますが、頻繁に使うものでない限り、うっすらと白いカビに包まれるものなどもありました。
持ち帰りそのまま使う状態を確認しつつ、漆を塗ったものも同時に進め、改めて漆が湿度の多いアジアの生活に添う技術と工芸であることを再認識いたしました。

ラトビアの国土の半分は森。古くから良質な木材を産出するする国として現在も森に関わる仕事が多く残ります。バルト三国の冬は大変厳しく、冬の間の貴重な仕事として木工細工は今でも活きた仕事で、用途に合わせた木の種類の使い分けや皮などの細工までラトビアの生活文化は森と切り離すことはできません。
しかし、実際の現代生活やレストラン、商業施設などでは、磁器や陶器、カトラリーも金属のものが主流になりつつあり、木製品のスプーンや皿というものは、飲食店でも見かけません。日常使いで使用する人は、今後減ってゆく可能性がある状況が伺えます。
一方、日本では、木地の産地、職人の数が減少し、日常的に漆の器を生活で使う方も年々減っています。漆の仕事に就かれている作り手さんたちは、再度漆を生活に取り入れるための取り組みや商品開発に大変な努力をされています。
日本の数少ない漆塗り用の木地工房を訪ねると、製品の形に合わせて加工用の道具であるカンナから作ることに始まり、作家物でない限りは、形やデザインを気軽に現代生活に合わせて取り入れることは手間や労力が多く、製品も高価になり、手軽に手が伸びる価格帯では実現しづらい様です。
日本のマーケットは、北欧デザインが好きな人が多く理解が深い。デザイン性の高い北欧デザインの木地に日本の漆を塗りってはどうか。国境を超えて衰退する可能性のある二つの仕事を組みあわせることにより新しい漆のマーケットが生み出せないか、と考えたのが今回のMade with Japanの取り組みです。

そして、翌年の2017年。改めてたくさんの職人さんに出会える森の民芸市の開催に合わせ再度ラトビアへ飛びました。この時は、友人2名、雑誌のDiscover Japanの編集チームも現地で合流し、賑やかな滞在になりました。

バルト三国の中でも最大と都市となるラトビアの首都リガは人口約70万人ほど(2017年)。このリガ郊外で毎年6月に行われる森の民芸市は、手仕事の好きな観光客が世界中から多く訪れます。会場は、1924年に設立されたラトビア野外民族博物館の87.66ヘクタールほどの敷地内で行われますが、お祭りで使用されているのは1/3程。その他の場所では、古代ラトビアの農夫や漁師の生活、また彼らが利用していたお風呂や住宅、教会、井戸、作業部屋などを保存した118ほどの様々な建築様式をみてまわることができます。
二日間の会期中、会場には、ユグラ湖畔に屋台が多く出店しており、伝統的なラトビアの食事をいただくことができ、正門近くのステージでは、伝統的な歌や踊り、楽器演奏などが行われています。子供が思い切り走り回れる環境ですので、是非家族でのんびりと時間に余裕を持った滞在をお勧めいたします。
THE ETHNOGRAPHIC OPEN-AIR MUSEUM OF LATVIA
MAP

どことなく日本建築にも似た雰囲気のあるラトビアの伝統的な家や光。それもそのはず、ラトビアは、太陽神サウレ(Saule)を中心としたラトビア神道と言われる日本と近い自然崇拝の文化があります。
茅葺き屋根や戸口の狭さ、装飾、紋様など。外国ですが、どこか懐かしく感じる光景に出会うこともあるでしょう。

*民芸市の会場には、入場券を購入して入りますが、この時に大きなお札などのお金だとお釣りがないことが多いようです。「お釣りが貯まるまでちょっと待ってて」と後回しになってしまいますので、リガの街から移動する前に小銭や細かいお金を準備しておくとスムーズに入場できるかと思います。

バルト三国の木工技術に日本の漆を

今回の取り組みの仕入れを行う前年にあたる2015年に私たちは、リトアニア、ラトビア、エストニアの順に旅をしました。モスクワを経由して最初に滞在したリトアニアの都市、カウナスにて杉原千畝博物館を勧められ、歴史と取り組みを知ることができました。国ではなく、個人の融資で大切に保存され運営されています。
杉原千畝氏は、第二次世界大戦中の1939年から日本領事館領事代理として赴任時し、1940年4月から再び始まったナチス・ドイツの急進撃で命の危機が迫るユダヤ系避難民の方々へ独断でその後に約6,000人にのぼる避難民を救ったと言われる「命のビザ」と呼ばれる通過査証を発給した日本人です。
日本通過ビザを受け取った避難民は、シベリア鉄道を使いシベリアを横断し、ウラジオストクより福井の敦賀港に上陸。その後日本国内を通過し、神戸や横浜を経て世界各国に避難していったと記録されています。
この旅に出る前の時点では、バルトの木工と日本の漆、というざっくりとした企画で、富山県で漆を塗る企画書としてプロジェクトを進めておりましたが、「命のビザ」で最初にたどり着いた日本の港が福井県の敦賀港であったことから、再度これらのつながりを日本の次世代へ向けて少しでも記録に残せればと、Mokunejiなどを手がけられるプロダクトデザイナーの古庄良匡さんより福井県鯖江市にて漆一筋に200年の歴史をもつ漆琳堂さんをご紹介いただき、今回の企画にご協力頂けることになりました。

ものづくりの盛んな鯖江にて

鯖江市と聞けば、国内生産シェア98%と言われるメガネフレームの産地として思い出す方が多いかもしれませんが、鯖江では、漆、繊維、和紙など質が良く、素晴らしい仕事が数多くあります。
お世話になった漆琳堂さんでは、日本国内で同業種の工房でも珍しく、毎年たくさんの若い就職希望者が訪れる大変活気のある会社です。
寛政5年(1793年)創業。窓口として受けていただいた代表の内田徹さんは八代目を継承されている日本の伝統工芸師です。

日本の漆は、高山の飛騨春慶塗りのような工芸を除き、比較的木地の木目などを見せずに塗ってしまうものが多いですが、ラトビアの木地は職人さんが用途に合わせ木材を使い分けて制作し、木目の美しさなども見せながら仕上げる仕事が特徴です。持ち帰ったものの中には、ラトビアでテレビに出るほど有名な伝統工芸師さんの作品もあります。そこで今回は、日本の生活で水が溜まりやすくカビやすいと思われる箇所、子供の玩具などで口をつける場所などに漆を塗る場所を絞り、部分的に塗って仕上げていただくことにしました。
そして、内田さんの製品の魅力の特徴でもある明るい色づかいの漆があることから、幾つかの色を指定して取り組んでいただくことにしました。
鯖江での滞在は、夜は河原でホタルを鑑賞し、翌日は車で移動し、勝山市には恐竜博物館(https://www.dinosaur.pref.fukui.jp)や、永平寺などに訪れ、楽しい滞在になりました。 https://daihonzan-eiheiji.com

テストなどを確認しながら約半月を経て製品が仕上がり製品が東京に届きました。2017年の取り組みの展示会は、12月に緒方慎一郎氏の協力の元、中目黒にあるHIGASHI-YAMA Tokyoをお借りして行いました。
ご協力いただいたHIGASHI-YAMA Tokyo様、ご来場いただきました皆様へ改めて心よりお礼申し上げます。

*2017年のラトビア+鯖江の漆のプロジェクトの展示会は終了しております。

このラトビアの木工と漆の取り組みに自社製品開発としてご興味のある漆塗りを扱われる事業者様がもしもいらしたら是非下記までお声がけください。
info@folkhood.com

メディア情報

掲載誌
取り組みの様子は、
Discover Japan ▪️2017年9月号 Vol.71「職人の生き方特集」号にて、8ページにわたり特集掲載いただきました。

▪️Pen+「Made in Japanを世界へ」にて、6ページにわたり特集掲載いただきました。

Web
参照:
Discover Japan 2017年11月号に掲載された内容:ラトビア編
Discover Japan 2017年11月号に掲載された内容:鯖江編

December 20, 2017

Made with Japan
Latvia+福井県〜鯖江
2017

FOLKHOODのメインプロジェクトであるMade with Japan。
私たちは、この取り組みを通じて、これまでの消費や寄付などの経済活動を通じてお金で解決するだけの問題解決ではなく、労働や環境、文化や技術、そして素材、時間に対する価値のフェアトレードができないかと考えています。
2017年は、バルト三国ににあるラトビアと福井県の鯖江の漆の仕事の融合を試みました。
Text and Photo by Aki Tomura