October 27, 2018

Project
ONSEN for Your Bath
Toji-Vacances
in Japan

日本独自の温泉文化である湯治。湯治とは、日本においては古くから行われていた行為で、特定の疾病に合わせて各地の温泉地に出向き、多くの人が温泉療法によって病気からの回復を試みていた行ってきた行為です。
日本の湯治文化を世界へ。
そして、私たち日本人も改めて、日本人と水との関わりや文化を再編集する時期に来ているのではないでしょうか。毎分約260万リットル湧出している日本の貴重な自然資源との新しい付き合い方を日々の暮らしの中で見直してみてはどうでしょう。
Text and Photo by Aki Tomura

日本の温泉へ

室町時代から歴史のある日本の湯治文化

日本人が長生きなのは、毎日湯船に浸かるお風呂の習慣があるからだとも言われます。その起源となるのは、水浴は心と体を清浄にするものと考えられてきた固有の宗教、神道の禊(みそ)ぎの習わしにはじまり、心身を清浄にする水垢離(みずごり)や、仏教伝来後には、「湯祓(ゆばらい)」などの、神仏に祈願する前に水を浴びて、身を清める象徴的な儀式があり、それらが庶民に下りてきたのが行水(ぎょうずい)という習慣であると言われています。
西洋の科学的な療養ではなく日本人は、水そのものが心身ともに清らかにしてくれるという浄化力があると感じている民族であるとも言われています。
現在は、医学や科学が進み、お湯の効果も効能と言わず、適応症という表現で呼び、効果の中にプラゼボ(プラシーボ)効果(測定可能な状態の改善)も含めて理解されています。

日本は世界屈指の“温泉大国”であり、源泉数が2万7000本を越え、老若男女問わず、温泉を楽しむ人口は現在も多くいます。
温泉と旅館と食事が結びついて、一泊二食の旅ができる温泉宿の集まる”温泉街”が生まれ、観光や宴会などを行う施設という概念の定着は新しく、江戸時代から。その前からある”湯治場(とうじば)”とは、病気療養である湯治を目的に長期滞留する温泉地のことで、江戸時代より前から存在する日本の歴史ある文化です。現在も各地にありますが、旅館とは違い観光を目的とした短期滞在向けではないため、お湯と寝る場所の提供がメインで、食事は、自炊や外食ですませることが基本となるところが多くなります。しかし、アレルギー対応や体質に合わせた食事が自己管理下で行えたり、地元の食材を料理したり購入してきて過ごすのも海外の方などへも日本滞在の良い経験や思い出になるでしょう。

温泉を医学的に推薦することはなく、現在は、お湯に効能があるという表現はふさわしくないとされています。よく使われてきた「効能」という表現は、現在では適応症、適応症効果、という表現に置き換えられて使われます。
日本では、浴用、飲用と効果を調べますが基本的には、どちらも自己責任です。お湯の種類をよく調べ、自分も同行者との相性をしっかりと確認してから利用するように十分に気をつけてください。日本の温泉街では、お酒を飲む旅館などと併設されることが多いこともあり、年間に置き換えると自宅のお風呂での死亡事故よりは少ないとされているものの温泉での死亡事故は多くあります。外気温との温度差が大きい冬場や飲酒時の入浴、高齢者や子どもだけの入浴などには、日本人も注意をして利用しています。
飲用に関しても同じく自己責任です。現在は日本人でも積極的に飲む人は少なく、飲む場合も少量です。下痢中の方やお腹の弱い方へは、特に勧めません。多くの方が飲む場所、勧められている場所にはコップが置いてあることが多いようです。ですので、コップがない場所は気をつけるか、現地の方へ確認したほうが無難でしょう。

日本には、温泉法というものがあり、採取や営業、成分表示義務など厳しく管理がされています。近年の改正では、温泉偽装問題に対応するため、温泉を公共の浴用または飲用に供する者に対して、温泉法施行令で規定する10年以内ごとに温泉分析書の提出を義務付けています。

日本の温泉のお湯の種類には、下記のような分類に分けられています。
それぞれ表示義務もありますので、温泉地でプレートを確認することができます。

単純温泉

無色透明無臭で含まれる成分が薄く刺激が弱いため、入り心地がよく利用範囲は広く肌の弱い方・赤ちゃん、病後回復期の静養、手術後の療養、骨折・外傷後の療養、刺激が少ないので脳卒中のリハビリなどに利用され、「中風(脳卒中)の湯」「神経痛の湯」などと呼ばれ、鎮静効果大きく病後回復、疲労回復、ストレス解消、健康増進などに効能があるといわれています。
浴用は、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、痔疾、慢性消化器病、冷え性、疲労回復、健康増進、病後回復期。
飲用は、胃の粘膜に弱い刺激を与える性質があり、慢性胃腸病、慢性便秘、リューマチ、腰痛、関節・筋肉障害、神経障害など。
日本各地に多く分布しており、単純と言いながら白濁の湯であったり真っ黒のお湯であったり地方により多彩な表情を持つ温泉です。

塩化物泉

海水の成分に似た食塩を含む温泉です。食塩の働きでよくあたたまる。塩分の殺菌効果から、筋・関節痛、打撲、捻挫などによく、湯さめしずらいことから冷え症、慢性婦人病、月経障害、不妊症、病後回復になどへ向くとされ、万人向けの温泉といわれています。
浴用は、血液の循環を促進させ殺菌力が強く痛みをやわらげる鎮静効果があるといわれ、切り傷、火傷、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病、消化器、便秘、筋・関節痛、打撲、捻挫、冷え性、月経障害、不妊症、病後回復などですが、アレルギーなどで肌に弱い方は長時間の入浴には注意が必要なようです。
飲用は、胃液の分泌を促すので、胃酸欠乏症、慢性消化器病、慢性便秘、慢性胃カタルなどですが、循環器疾患(ナトリウムが体内に水分の貯留をきたすため)高血圧症、腎臓病、心臓病。むくみのあるときは、飲泉は控えるように注意があります。

炭酸水素塩泉

炭酸水素塩泉は、「重炭酸土類泉」と「重曹泉」に分けて区分できます。、膚の表面を軟化させる作用で皮膚の脂肪や分泌物を乳化して洗い流すため、石鹸を使わずにも洗い流すことができます。皮膚病や火傷、切り傷によいと言われます。痙攣、炎症を抑える作用があり、アレルギー疾患、慢性皮膚病、じんましんなどへ効果があると言われておりますが、皮膚表面から水分の発散が盛んになることから清涼感がありますが、肌のツッパリや乾燥には注意し、保湿剤などを準備しましょう。
鉄分や炭酸分を多く含み、湯口や湯船に白淡褐色の付着物がつく特徴があります。
【重炭酸土類泉】
カルシウムイオンやマグネシウムイオンは鎮静作用があり、けいれんや痛みをやわらげて炎症を押さえる効果があります。
肝臓病、糖尿病、胃腸病、痛風、切り傷、火傷、皮膚病、利尿など。
【重曹泉】
乳化現象により皮膚からの水分の発散がさかんになり、湯冷めしやすいため、火傷に効くほかに切り傷、慢性皮膚病、美肌効果も高いと言われています。

飲用は、利尿効果が高く、また胃の中の酸を中和させ腸の運動を鎮める効果があり、慢性消化器病、慢性便秘、糖尿病、痛風、肝臓病、尿路疾患、尿路結石、膀胱炎、肝臓病、肝炎、痛風、腰痛に良いとされていますが、高血圧症、腎臓病の場合は、飲泉は控えたほうが良いそうです。

硫酸塩泉

カルシウム硫酸塩泉(石膏泉)、ナトリウム硫酸塩泉(芒硝泉)、マグネシウム硫酸塩泉(正苦味泉)にわかれます。
硫酸塩が含まれる。苦味のある味。芒硝泉、石膏泉、正苦味泉に分かれ、血行をよくする働きがあり外傷や痛風、肩こり、腰痛、神経痛などに良いとされてきました。
【石膏泉】
脳卒中、肝臓病、糖尿病、動脈硬化、高血圧症、肥満症、リュウマチ、痛風、腰痛、神経麻痺、運動麻痺、関節傷害、筋肉傷害、五十肩、肩こり、肝炎、骨折、脱臼、打ち身、切り傷、やけど、不眠症、胃腸病、慢性便秘、尿路疾患、痔疾、婦人病、冷え性、更年期障害、不妊症、慢性皮膚病の湿疹、水虫、汗疹、しもやけ、凍傷、いんきん、たむし、健康増進、病後回復、疲労回復、ストレス解消など。
【芒硝泉】
肝臓病、肝炎、動脈硬化症、糖尿病、高血圧症、リウマチ、痛風、腰痛、神経麻痺、運動麻痺、関節傷害、筋肉傷害、五十肩、肩こり、不眠症、肥満症、胃腸病、慢性便秘、切り傷、やけど、慢性婦人病、冷え性、更年期障害、不妊症、慢性皮膚病の湿疹、水虫、汗疹、しもやけ、凍傷、いんきん、たむし、健康増進、病後回復、疲労回復、ストレス解消など。
【正苦味泉】
大変貴重な温泉で、「脳卒中の湯」とも呼ばれます。血圧を下げて痛みをやわらげる鎮静効果があり、脳卒中、動脈硬化、肝臓、胆石、胃腸病、肥満、高血圧など。

飲用は、慢性胆嚢症、胆石症、痛風、慢性便秘、肥満症、糖尿病、肝臓病、肝炎、月経障害。

二酸化炭素泉

二酸化炭素を含む温泉で、炭酸ガスの小気泡が肌につく泡のシャンパンの様なお湯。数が少なく非常に貴重な温泉と言われています。低温だが保温効果が強い。代表的な温泉地は秋田の玉川温泉、大分の長湯温泉などですが、福岡の脇田温泉新船小屋温泉、奈良の吉野温泉、北海道は五味温泉、協和温泉。長野には8箇所ほどの二酸化炭素泉の登録があるようです。毛細血管を拡大させる性質が有るため、血液の循環を促進させ血圧を下げる効果があるため浴用は、心臓病、動脈硬化、高血圧、神経痛、胃腸、便秘、利尿、切り傷、火傷、運動麻痺、筋・関節痛、打撲、冷え性、更年期障害、不妊症などに良いとされています。
飲用は、胃腸の粘膜の働きを促進させるため、慢性消化器病や、慢性便秘、食欲増進。利尿効果があるため尿路疾患・腎臓病などに効果がある。下痢の時は、飲泉はしてはいけないとの注意があります。

含鉄泉

鉄分を含むことから湧き出したときは無色透明、空気に触れると褐色になお湯。鉄分を多く含んでいるため造血作用が促進されるといわれ、貧血、腎臓病、胃腸、筋・関節痛、慢性皮膚炎、更年期障害、月経障害などへ。入浴と飲泉で貧血、慢性消化器病、痔によいといわれる温泉です。強酸性の鉄泉の場合は乾燥肌の人へ向かないとされているので注意しましょう。
飲用は、禁止です。飲まないように気をつけましょう。

硫黄泉

遊離炭酸ガスや硫化水素を含有しない「硫黄泉」と遊離硫化水素や炭酸ガスを含有する「硫化水素泉」の2種類があります。硫化水素泉の湯気を口から吸入すると痰の切れが良くなると言われ、慢性気管支拡張症等から、慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、痛風、便秘、筋・関節痛、痔など。炭酸ガスと同様に末梢毛細血管を拡張させるため、動脈硬化症やしもやけ、頸肩腕症候群等に良いとされています。
硫化水素ガスに触れた鉄・銅・錫等の金属は、酸化して黒くなるので装飾品は外して入浴します。日本人にも結婚指輪が真っ黒にしてしまう方が多くいます。気をつけましょう。
乳白色の易く美白効果が有るといわれますが、乾燥肌の方、皮膚、粘膜の過敏な人、特に光線過敏症の方などには向きません。
飲用は、糖尿病、痛風、便秘などに良いとされますが、下痢の時には飲まないようにという注意があります。

酸性泉

文字通り酸性度の高い温泉で、無色又は微黄褐色で酸味があります。抗菌力があるため、 白癬(はくせん)症、トリコモナス膣炎、疥癬(かいせん)等に良いとされていますが、刺激が強いため、病弱者、高齢者及び皮膚の弱い人等には適しません。この泉質の湯は無色又は微黄褐色で酸味がある。殺菌力が強いのが特徴です。酸が体に強く作用するので、入浴時に肌がしみ、肌の弱い人へは勧めません。肌の強い方でも浴後はシャワーなどで洗い流すことが勧められています。
浴用は、殺菌力の強い成分から慢性皮膚病、消化器病、慢性婦人病、筋・関節痛、糖尿病にも良いとされています。
飲用は、絶対に禁止とされています。薄めて利用することで慢性消化器病には効果があるといわれることもあるようですが、日本の協会では勧めていません。

放射能泉

放射能を含む温泉というと怖い感じがしますが、実際には温泉中に含有されるラドンは常温で気体、湧出後は空気中に散飛し、浴用・飲用でも体内に吸収されますが、呼気によってすぐ体外に排泄されるため人体に危険は殆んどないと言われています。無色透明のお湯ですが、薬効の効率がもっとも高い反面、湯あたりを起こしやすいお湯なので注意が必要ですが、薬効の効率がもっとも高いです。数が少なく貴重な温泉だと言われています。
高尿酸血症、痛風、尿路慢性炎症、糖尿病に効果があり、下垂体副腎系、卵巣、睾丸の機能を高める作用もあると言われており、浴用によって腎機能が改善され、鎮静的に作用するので、神経痛、リューマチ、神経麻痺、自律神経過敏状態等に利用されます。尿酸を尿から出すので「痛風の湯」と呼ばれています。
浴用では、薬物中毒、食中毒、腎臓病、腎炎、胆石症、慢性胆のう症、肝臓病、肝炎、糖尿病、慢性胃腸病、胃腸カタル、大腸カタル、慢性便秘、尿路疾患、痔瘻、動脈硬化症、高血圧症、動脈瘤、自立神経失調症、白ろう病、慢性リューマチ、関節傷害、神経麻痺、筋肉傷害、痛風、腰痛、五十肩、肩こり、不眠症、骨折、脱臼、打ち身、婦人病、冷え性、更年期障害、不妊症、慢性婦人病、肥満症、慢性皮膚病、湿疹、汗疹、わきが、しもやけ、凍傷、いんきん、たむし、病後回復、ストレス解消、健康増進。
飲用では、痛風、慢性消化器病、慢性胆嚢炎、胆石症、神経痛、筋肉痛、関節痛と言われています。

熊本県山鹿市の湯治のできる放射能泉のならさこの湯は、様々な病気が完治したというたくさんのお礼のお手紙を見ることもできる湯治宿で、私たちFOLKHOODのメンバーも旅の途中で立ち寄ることが楽しみな場所です。(*日本語のみの対応になりますので、英語などでの問い合わせは、ご遠慮ください)



1300年前の『出雲国風土記』が書かれた奈良時代から現代まで、ありがたいことに日本では温泉がこんこんと湧き続け、誰も分け隔てなく人々を(ある地域では、猿やカピパラも)もてなす素晴らしい天然資源がある。
人間、誰もが平等に人生は一度だけ。長期休暇を当たり前に取るヨーロッパの方々に学び、それぞれが自分に相性の良い土地やお湯を見つけ、日本の大地からこんこんと湧き出るありがたい恩恵を受けて、ゆっくりと滞在する長期の湯治を通して、日本各地の地方文化を堪能する旅を私たちは推進してゆきます。

*温泉はたくさんの人が利用する場所ですので、マナーがあります。湯船を中心にお風呂場を汚さないことを軸に考えるとわかりやすいかもしれません。体や髪を洗ってから湯船にはいること、タオル(できれば、女性は長い髪などもタオルやゴムなどでまとめておくと理想的です)を入れないこと、湯船の中で歯磨きしないことなど。
最近は、英語での注意書きもありますが、日本人は、不快でも「遠くからわざわざ来ていただいているのだから、楽しんでもらえるように」と我慢しています。しかし、中には洗剤を使って服や下着の洗濯をしていたり、子供だから良いでしょ、とオシッコをさせてしまう方、プールのように泳いでいる外国の方などを見かけます。ご協力いただけますように、何卒よろしくお願いいたします。
一般的に刺青のある方が禁止ということも書かれていますが、個室の部屋にお風呂がある場合は関係ありませんので、部屋風呂のある施設を利用されることで解決します。
足首や首元などの小さな刺青に目くじらを立てて怒ったり、拒否されるところも少ないかと思いますので、あらかじめ施設の方へ伝えたり、周りの人へ気遣ってあげてください。日本好きの皆様はご存知のように、日本人は優しいです。きっとほぼ「大丈夫よ。ぜひ利用して」と言ってくれるか、心置きなく利用できる空いている時間を教えてくれるはずです。

October 27, 2018

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日本独自の温泉文化である湯治。湯治とは、日本においては古くから行われていた行為で、特定の疾病に合わせて各地の温泉地に出向き、多くの人が温泉療法によって病気からの回復を試みていた行ってきた行為です。
日本の湯治文化を世界へ。
そして、私たち日本人も改めて、日本人と水との関わりや文化を再編集する時期に来ているのではないでしょうか。毎分約260万リットル湧出している日本の貴重な自然資源との新しい付き合い方を日々の暮らしの中で見直してみてはどうでしょう。
Text and Photo by Aki Tomura